2023年7月22日土曜日

庭木の手入れ

 


今はYoutubeなどでも、どう庭木の手入れをしたらいいのか、いろいろ動画で見ることができる。

上写真は、そんなマニュアル走りの一冊。おそらく、日本で一番古いマニュアル書。30年くらいまえ、東京神田の古本屋をめぐっていたときに、手に入れた。執筆者は、造園家業に就いていた斎藤勝雄という人が書いたもので、当初は大正11年に『庭木整枝法』と題して出版されて、戦後昭和24年に、タイトルを変更して書き直したものだということ。その斎藤氏は、京都の小川治兵衛の下での修業もし、海外にても活躍した庭師。

しかし日本の手入れ法は、あくまで日本の庭における手入れ法。文化によって、考え方も変わるので、その実践法も変わる。基本的には、日本の狭い庭において、どう維持管理していくかという考えが、支配的になる。盆栽延長の、小人さんの志向だ。ウォークマンや、日本でしかない軽自動車という様式を思い起こしてみればいい。

中国や韓国では、日本の手入れ専門の植木屋さんみたいな職業はない。いや日本でも、神社と寺では考えが違うので、手入れの仕方も変わる。ただ同じ文化圏でのことなので、加減が変わる、といおうか。神社では、森自体が神になるという日本人の無意識があるので、あまり木をいじらない。逆に、お寺の庭では、きっちりする。がどちらも、庭掃除には、清める、という観念が付くので、植木職人あがりの本職の庭掃除は、土が土俵のように磨かれる。もうそうする町場の庭も、なくなってしまっているけれど。

そんな大きな文化の話でなくても、たとえば、退職した旦那さんが、好きでこまめに庭木をいじっているものなんかもそうだ。本職からすれば、シルバーさんの手入れと同じで、ただ飛び出たところを鋏ではじいて丸めているだけだが、それは、セラピーとしての庭なのだ。木の生理(自然)を無視したところが大きくなるけれど、本職の手入れだって、実際は自然まがいな小人作りなんだから。近所の旦那さんにも、体が動くうちは、自分でやったほうがいいですよ、と、私は言っている。